2019年に注目したい「フィンテック市場15社」と「4つのトレンド」まとめ

今回は2018年にFreaks.iDで紹介したフィンテックスタートアップを紐解き、大きく4つのトレンドを簡単に紹介していこうと思います。

1.新興国で広がるAI与信/クレジットスコアリング

2018年で最も目立ったのは中東や南米地域でAIを用いた与信サービスを展開するスタートアップたちです。

たとえば11月にはパキスタン発のAIマイクロファイナンス企業「TEZ FINANCIAL SERVICES」が110万ドルを調達しています。スマホを通じたインターネット活動を分析して、貸し倒れリスクを予測。スコリング化して一定額のお金を貸し出します。

9月にはアフリカ発の金融スコアリングサービス「Jumo」が5,200万ドルを調達。ゴールドマン・サックスがリード投資を務めました。アフリカではモバイル決済が広がっており、通信キャリアが顧客の膨大な決済記録を有する環境にあります。同記録を解析して与信を取り、金融サービスを展開する仕組みです。

いずれの地域においても、そもそも銀行口座を持っていない人が大勢いる一方、スマホの普及が急速に進んでいる市場環境と言えるでしょう。このギャップに目をつけ、インターネットの利用状況にAI解析を組み込んで与信を取るサービス展開を仕掛ける例を昨年頻繁に見かけました。

日本でも大量の移民受け入れが始まることから、アジア圏からやってきた人向けにAI与信をかけて何かしらのフィンテックビジネスを展開できるかもしれません。

新興国以外においても、銀行口座を持たない人をターゲットにしたスコアリングサービスが多数登場。携帯電話の支払状況、SNS及びショッピング活動履歴に代表される実生活のデータを元にスコアリングを行う「Colendi」は9月に250万ドルを調達。同社が解析したスコアリング情報はブロックチェーン上で安全に管理し、世界中の提携金融機関へ情報提供。データバンク企業を目指しているようです。

「Colendi」と似たようなサービスに「Cignifi」が挙げられます。同社は8月に430万ドルを調達。与信を取るプロセスは他社とほぼ同じ。深夜に電話をする人や、長電話をする人はデフォルトしやすいといった独自のロジックを組み込んでいる点が面白いと言えるでしょう。

2.将来性を予測してクレカ発行

クレジットカードや銀行口座を持てなかった人を対象にしたサービスも多々登場した1年でした。

大学生向けにクレジットカードを提供する「Deserve」は11月に1,700万ドルを調達。学歴や貯金額から学生の将来のキャリア成長率をAIが判定・与信をとります。一定以上のスコアリングが担保できた場合、クレジットカードが発行される仕組みです。全く同じ仕組みでインド市場で活躍しているのが「SlicePay」。9月に1,500万ドルを調達しています。

留学生向けにも同様の金融サービスがあります。11月には学業成績と将来のキャリアパスを評価して一定額を貸し付ける学生ローンサポートサービス「MPOWER Financing, Public Benefit Corporation」が1.1億ドルを調達しました。

学生だけでなく一般消費者向けにもクレジットカードを発行する企業も登場。低クレジットな消費者を対象に過去の購入履歴や貯金額から将来の支払い能力を予測する「Petal」は10月に3,400万ドルを調達しています。

いずれの企業も、従来のクレジットカード会社ではパスさせなかったクレジットスコアラインを将来的には超えるだろうという期待値をAIで算出しているのが特徴と言えます。仕組みの点では、1つ目に述べたAI与信と同じと言っても良いでしょう。

日本ではクレジットカードが発行されない事例はあまり見かけないかもしれません。しかし、海外ではデフォルトを起こしてしまう人が多数いるため、将来のクレジットスコアを予測する業態が流行っている印象です。

3.デジタルバンクの乱立

2018年はとにかくたくさんのデジタルバンクサービスの調達ニュースを見かけました。

モバイルバンキングアプリ「Empower」は著名VC「Sequoia Capital」などから450万ドルを調達。ロンドン拠点「Monzo」は15億ドルの企業価値で1.5億ドルを資金調達予定と報じられました。11月には「Cogni」がシードラウンドで170万ドル調達しました。

いずれの企業も利便性の高さや利息の高さからユーザーを競合より先に集めて金融データバンクになろうとしている印象を受けます。ユーザーを集めることに注力していることから、収益モデルが遅行してしまっている点はスタートアップならではと言っても良いかもしれません。

さて、先述したデジタルバンキング企業は先進国ですが、発展途上国地域ではそもそも銀行口座を持っていない人が多く、大きな市場需要を秘めています。11月、ウルグアイ発のデジタルバンキングサービス「Bankingly」が525万ドルを調達しました。AIチャットボットからマイクロレンディングサービスまで一貫した金融サービスを提供します。

Bankinglyをみると、低所得者ユーザーを大量に集めクレジットデータを蓄積、水平展開する戦略が伺えます。こうした途上国でのデジタルバンキングトレンドは2019年も見られるでしょう。

一方、先進国では競合差別化が図りづらくなりいよいよ淘汰が始まるかもしれません。こうしたレッドオーシャンでも生き残るのには明確なユーザーターゲティングが必要となります。この点、9月に6,000万ドルを調達した「Monese」は好例です。

Moneseはイギリス拠点のデジタルバンク。居住履歴がなくとも銀行口座を開設できるアプリを提供しています。ヨーロッパ圏は移民や国外移動する人が多く、こうした移動頻度の高い人をターゲットとしています。銀行口座開設は約2分ほどで完了してしまう手軽さが非常にウケています。東南アジア圏でも国内外の移動が頻繁に発生していることが予測でき、「アジア版Monese」のコンセプトは受け入れられるかもしれません。

4. EC支払い方法にもデータ解析。リスク分散の巧みな手法

10月、スウェーデンの後払い決済サービス「KLAMA」が約2,000万ドルの資金調達に成功しました。同社はクレジットカードを持っていない人向けに小切手での支払いオプションを提供。住所と電話番号に代表される基本情報を入力すると顧客のデフォルトリスクを判定。スコアが合格ラインに達すると、後日送られてくる小切手を約30日間以内に支払う余裕を持った決済方法を選択できます。

顧客は支払い期日に柔軟性を持たせることができ、かつカード情報入力の手間を省くことができます。ブランド側はKLAMAから代わりに代金が支払われるためキャッシュフローを潤滑に回すことが可能となります。

顧客が貸し倒れしてしまうとKLAMAが大きな被害を被りますが、単価が比較的安いアパレル商品に絞っている点とAIの高い与信判定精度を持ち合わせていることから低いデフォルト率をキープしている模様です。

低所得者向けのEC決済サービスも登場しています。11月にはEC無利子分割払いサービス「Sezzle」が1億ドルを調達。一括払いの余裕のない若者をターゲットに、6週間・4回の無利子分割払いサービスを提供。

KLAMAとSizzleの2社は消費者から手数料を取らない代わりにブランド側から利用料を取っているビジネスモデルを展開。従来とは真逆の収益モデルで成功を収めています。利用企業にとって、柔軟なEC決済オプションを通じ商品購買率を高められるため利用料を超えるメリットを得られるのでWin-Winな形を維持できるのです。

クレジットスコアの低い顧客をターゲットにした決済分野では、米国の上場企業「Rent A Center」が台頭していましたクレジットカードを持たない低所得者向けに高級家具や家電を分割支払いで販売するサービスを展開。支払いの途中で商品を気に入らなければ返品ができる柔軟な支払いプランを提供。

しかし支払いを滞った顧客の家に押し入って商品を強制回収する企業文化が社会問題になっています。加えて、低所得者向けに高級商材を無利子かつ分割決済で販売していることから大きなリスクを背負うばかりか、顧客のクレジットスコアリングも人力で判定することから非常に危ういビジネスモデルを展開している脆弱性を持ちます。

そこでKLAMAやSizzleはデータ解析を軸にデフォルトリスクを予測・分散させました。ビックデータによるスコアリングを事業軸に据えることで、たとえばKLAMAはアパレル以外の多分野に展開し、Rent A Centerが参入する家具・家電分野へ拡大する可能性もあります。旧態依然とした分割支払い分野では、AIおよびビックデータ解析によるディスラプトの可能性が十分にあると考えます。

ここまで4つのトレンドを紹介してきました。総じてAIによるスコアリング判定や、これまでリスクとしか見られていなかった低所得者層へのアプローチが目立ちました。日本は中流家庭が多いためクレジット判定需要は薄いかもしれませんが、アジア圏を市場と捉えると大きな商機が見えるかもしれません。

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